まんぼう日記

takataka's diary

NC一日目

(cf. 旧「まんぼう日記」を発掘 - まんぼう日記 )

 

発表件数は増加してきているらしい。意外。 年間のNCの発表件数の半分が3月に集中していて、今年は95件。 いままでの2セッションパラレルでは捌ききれんようになって、一日目は3セッションパラ。 特にテーマを設定してセッションを構成しているわけではないので、まあごった煮みたいな感じです。 量子コンピュータに、心理物理、学習理論に、生理実験。 「脳・神経系」、「並列・分散」、「学習・適応」のどれか一つがキーワードやったら何でもありやね。

 

3月ということもあって、卒論・修論生の発表がかなりの割合を占めている。 自分で発表もしてないくせに勝手な感想ですが、 「この研究でこれから飯食うていくんや」という感じの若手研究者の発表て少ないな。 そういうんはみんな海外の国際会議に行ってしまうんやろうな。 それから、企業からの参加が非常に少ない。 懇親会の席で聞いたところによると、3件しかなかったらしい。 もはやブームとしてのニューロは完全に終わっている。

 

セッション後の特別講演は、彼末一之氏(阪大医学部)の「体温調節の自律分散型神経機構」という話。おもしろかった。まとめるとこんな感じです。

 

ほにゅう類などの動物は、体温調節のために様々な効果器系を動員している。 例えば我々は、体温が平常値より高くなると、はじめに暑いと感じて服を脱ぐといった「行動」を起こし、 さらに体温が上がると「皮膚血管運動」(血管の拡張)により熱放出量を増加させ、 それでも足りないときは「発汗」を促す、という順序で体温調節を行っている。 低体温時の反応も同様である。 このような体温調節は視床下部が担っており、 視束前野の温度感受性ニューロンの活動を受けて生成された遠心性信号を通じて制御がなされている。

 

これまでは、上記のように反応順序が非常に合理的に設定されていることから、 視床下部内にすべての体温調節機能を統合する中枢が存在すると考えられてきた。 ところが、最近の研究により、視床下部には遠心性信号を送るニューロン群が「行動」「発汗」など効果器ごとにモジュール化されて存在し、それぞれ独立に働いていることがわかってきた。体温調節に「統合中枢」は存在しないのである。 したがって、一見洗練された統合制御がなされているかに思える体温調節は「自律分散系」によって実現されており、全体としての合理的な反応機序は、長い進化の過程の試行錯誤によって獲得されてきたものらしい。

 

ここまでやったらふーん、で終わりなんやけど、ここから先、講演者の方の「夢」を聞かせてもらうことができました。

 

人間は科学技術の発展によって環境を操作する手段を手に入れ、 「行動」のみで体温を調節することを可能にしてしまった。 暑ければクーラーのスイッチを入れればよいのである。 ところが、暑さを避けたいという人間の欲求は、新たに都市部のヒートアイランド化などの環境問題を生み出してしまった。 ではどうすればよいか。 もはや人類に体温を一定に保つメカニズムは必要ないだろう。 変温動物にもどってしまえばいいではないか。 薬を飲むと視床下部の行動性体温調節メカニズムの閾値が上がり、 暑いと感じる前に発汗などの反応をおこすようにしてしまえばよいのだ。 突飛なアイデアに思えるかもしれないが、我々はすでに「痛み」を避けるために同じことをしているではないか。

 

とまあこんな感じの話でした。

 

講演会のあとは懇親会。 いろいろ話したんですが、突然たかたかの趣味の話に。 うーん、近頃は最近は専ら読書やなあ、と答えると、SFとか? と聞かれる。 で、うんそう、でも最近「智恵子抄」とか読んだりしてる、というと、 みんな絶句していた。 これはなかなか意外な線でええかも。 いや、別に意外性を追求して読んでるわけやないんですが。